オレ様探偵とキケンな調査
②手袋半分コ
「おはよう、信吾さん」


「あぁ」


いつものそっけない朝の会話に、もう寂しさも感じなくなっていた。


あたしの短くなった髪に気付きもしない信吾さんは、新聞を片手に乾いたトーストとコーヒーを口に運ぶだけで、部屋にはリビングからのテレビのニュースの音だけが響いていた。


「今日も帰りは遅くなりそう?」


「あぁ」


「うん。わかった」


コミュニケーションにもならない言葉の一方通行だけで、支度を済ませた信吾さんは、家を出て行った。


これでいい。


あの女を抱いた翌朝にわざとらしく優しくされるより、この方が何も考えずにいられる。


あたしは淡々と家事をこなし、ハワイで式を挙げた結婚写真をパタンと伏せて、部屋を出た。
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