オレ様探偵とキケンな調査
“椿”
その名前で自分を呼んでもらうのは、久々だった。
愛のない信吾さんからは、いつだって“なぁ”“オイ”。
近頃じゃ用件だけの会話にそれすら呼ばれることがなかったから、帯金さんのその声に、耳の鼓膜が嬉しく震えた。
「椿さ」
「ハ、ハイ…」
「子供いなくて良かったと思ってる?」
「ん…。もし、あたし達に子供がいたら…。こんな結果にはなってなかったかもしれませんよ、ね。でも、いても信吾さんを繋ぎ止められなかったのなら…いなくて良かったのかもしれません」
「なんで?」
「子供にまで寂しい思いはさせたくありません。こんな侘しさ、あたしだけで十分です」
「寂しさ、か…」
遠くを見つめる帯金さんのその呟きが、どこか切ない。
小松さんの話だと、過去に結婚歴があるような言い回しだった。
もしかして子供…いたのかな。
その名前で自分を呼んでもらうのは、久々だった。
愛のない信吾さんからは、いつだって“なぁ”“オイ”。
近頃じゃ用件だけの会話にそれすら呼ばれることがなかったから、帯金さんのその声に、耳の鼓膜が嬉しく震えた。
「椿さ」
「ハ、ハイ…」
「子供いなくて良かったと思ってる?」
「ん…。もし、あたし達に子供がいたら…。こんな結果にはなってなかったかもしれませんよ、ね。でも、いても信吾さんを繋ぎ止められなかったのなら…いなくて良かったのかもしれません」
「なんで?」
「子供にまで寂しい思いはさせたくありません。こんな侘しさ、あたしだけで十分です」
「寂しさ、か…」
遠くを見つめる帯金さんのその呟きが、どこか切ない。
小松さんの話だと、過去に結婚歴があるような言い回しだった。
もしかして子供…いたのかな。