ニートな同居人
最寄駅から家まで徒歩10分
この10分間の時間が好きだ
夜は少し暗いけど、犯罪も少ない町で人通りもあるので安全だ
家に帰ったら適当にご飯を食べて、風呂に入って出たら速攻小説を読もう
ご飯は、んー、カップ麺でもいいかな、なんて思ってしまう
でも明日も仕事だから、途中までしか読めないかな?
なんて考えながら歩いてると
「――ねえ、ちょっと!私と別れたいってどうゆうこと?」
「――だあかあーらー!もう本当無理なんだって!」
家と駅までの丁度真ん中辺りの公園から声が聞こえた
嗚呼、しかも出口付近
こんな喧嘩してるカップル…?
いや、これから別れる人達?の横を通らなきゃいけないなんて…
こんな時は、なんて思いバックの中をゴソゴソとイジった
『あった』
――大好きな小説
これでも見て通り過ぎちゃおう
ジー、とその絵を見る
「――大好きだって、愛してる、って言ってくれたじゃない」
泣きそうな女の人の声
「――ゴメンね?あんなの嘘だし」
ケロッとした声を出す男の人の言葉に驚いて
『わ、』
――ガタン、と地面に本を落としてしまった
しかも公園の真横
…まるで、話を聞いてたみたいじゃん
カアアア、と一気に体温があがるのがわかる
その時は数秒だったかもしれないけど、私には何十分もボーとしていた気がして、ハッと我に返り本を拾おうとしたら――
ス、と横からゴツゴツした大きな手がその本を拾った