ニートな同居人
『…え』
上を見上げると、本を持った、男の人――
「ドーゾ」
声からして、さっき別れ話をしてた男の人だ
…恥かしい、なんて思って
『ありがとうございます』
と小さく返して本を取り返そうとした瞬間―――
『わ』
ぎゅ、と彼が私の事を抱きしめた
思わずビックリして目を見開く
別れ話をして喧嘩していた現彼女さんも私と同じ表情をしていた
「ね、どうゆうこと!?」
コツコツと彼女のヒールの音が此方へ向かう
「…こーゆーこと。俺、この人と次付き合うから」
『…え、えええ!?』
思わず大きな声が出てしまい、口に手を持って行った
それより、この男の人――すっごい美少年
優しい香りがして、少しドキドキする
…まあ誰だって、こんな美少年に抱きしめられたらドキドキするよね?
「ふーん、地味なメガネ女ね」
き、と彼女が私を睨みつける
何も言い返せなくて彼女を見る
大きな瞳に白い素肌
モデルさんみたい
何も言い返せなくて下を向いた
「…確かに、地味なメガネ女だけど、お前よりは可愛いから」
―――え
「なっ…もう、いい。知らない。アンタ働かないしヒモで迷惑してたのよ!別れましょう。そうね、いい考えだわ。地味メガネ女もこの男に金を吸い取られて風俗でも始めるといいわ!」
ふん、と首をそっぽに向けた後、彼女は駅まで歩いて行った