優しさ、そして愛
それぞれの思い
櫂side
「はぁ…」
落ち着かねえ
何度も何度も時計を見てしまう
今日、やっと杏に会える
10年間離れ離れだった最愛の妹に
年に何度か杏とは手紙でやり取りをした
それに同封されている写真の杏は
日を追うごとに綺麗になっていく
親父が死んだことを知らされてすぐ
俺は組長である祖父に杏を引き取りたいと
願い出た
組長もそのつもりだったらしく
手続きなどが終わった一週間後
杏を迎えに行くことになった
「竣さん、遅ぇな」
「ほんとに杏が可愛くて
仕方ないんだな」
今は祖父と2人で杏を待っている
落ち着かない俺を祖父が笑う
親父とお袋の考えは知っているが
それでも杏と離れるのは辛かった
杏は2人の考えは知らない