オフィスの危険はつきもの
序章(プロローグ)
「プロローグ」

私は今でも覚えている。

苦しい困難を乗り越えて助けられるその度に言われていたあの言葉を。

『もし、予告通り六十歳死んでも…炯香(ひかこ)?堂々と自分生きるのよ?
自分で決めるの。いい?
就職つく炯香じゃなくても、私は誇りよ。
それだけは分かってね。死んでもあなたは夢を叶えてらっしゃいー』

こぼれ落ちた涙に右手をそっと添えながら、にこりと似合わない笑顔を浮かべる。

"お母さん"と、

『ー………ダメだ』

どれだけ喚いて嗚咽が出るほど喧嘩していたあの事件の時、嫌でも否定される言葉を言っていた"お父さん"のことを。

何度、頭が真っ白になったんだろう。

何度酷く衝撃で頭が痛くなったんだろう。

どれだけ、涙が出てたんだろう。

その死後のお伝えが来てからも、まるでタイミングがいいかのように思い知らされる通達。

『ーーー遺書が見つかったということで、あの家は引き取らせることになりました。』


その時はー…

息苦しかったし、体が動かなかった。脇腹がきりきりと痛むせいで、頭が回らなくて。

死にたいと思った自分はどれだけ愚か者なんだろうと酷く後悔した。

私は、気づかなかった、から。

いつも家で自分の体が限界とお母さんは訴えたのに働く夜勤仕事してたり。

父さんは自分の会社作ってけれど自己破産して病気で働けなくなってもご飯をよく食べてたり。

酷いこともあったけど、


小さく幼い頃からずっと、見ていて。
それでも、誰が死ぬなんてわからなかった。

ーーーーなのに、

病院にいくと何もないとでも告げるように二人とも真っ青に冷めていて。

私は、気づかなかった。

これほど精神を壊れるほど家を守る家族が、大事だってことが。

これだけ愛されていた。
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