首筋の月



「…あ。」

そんな事を考えていたら、信号が赤になってしまった。

交差点で足が止まる。

…ふと交差点の向こう側を見ると、この景色に全然マッチしていない人がじっとこちらを見つめていた。

紺の着物を着ていて、吸い込まれるような漆黒の髪を持ったきれいな女の人。

「……っ、」

あれ、声が…でない。
ていうか体動かない?!

なんで?
えっ、なんで?!


『……シキ…………』

…え?
今、頭の中に響いた透き通るような声で呼ばれた気がしたんだけど。

『シキ………』

うん、呼ばれた。
これは、女の人の声なの?

女の人から、目が離せない。

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