首筋の月


トラックが通り過ぎた後には、もう誰もいなかった。

な…消えた?!

人じゃなかったの…?

ももももしかして、あたし…

見ちゃった?
見えちゃいけないヤツ見ちゃったの?!

でも…
お母さんって、言ったよねあたし。

「お母さんなんて…なんで言ったんだろ。
お母さんのことなんて、何一つ知らないのに。」

あの声が、頭の中でずっと響いてる。

優しくて、はかなくて、暖かくて…それでいて、悲しい声。

あれがお母さんなのかな。
でもそれじゃあ、お母さんは死んじゃったってこと?

…やっぱり、信じたくない。
あれがお母さんなんて、信じない。

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