首筋の月
「おはよう、志紀ちゃん。」
先生が挨拶を返す。
いつも通りの日常が、そこにはあった。
向日葵 志紀(ヒマワリ シキ)。明日が18歳の高校三年だ。
なぜこんな苗字なのかというと。
あたし、施設の前に棄てられてたんだって。
だから、今でもこの孤児院に住んでる。
高校を卒業したら、働いて施設にお金を入れるんだ。
先生達はいいっていうけど、これは今までの恩返しなんだからして当然だと思う。
孤児院の名前は、ひだまりの丘。
あたしはここ、ひだまりの丘で育った。
赤ん坊のとき、名前と誕生日が書かれた紙と一緒に施設の前に棄てられていたらしいあたしは、物心ついたときから施設にいたから、親のことはなにも知らない。