オオカミくんに、食べられちゃった赤ずきん


「大神くんに会えてよかった」


「何それ」


「本当に思ったの」

まっすぐと大神くんを見つめる。

すると、彼は言った。


「ふっ、可愛いこと言うようになったね」


そして、彼が私に手を伸ばしてきた時


『これから、花火大会を始めます』


はっーー

放送が鳴った。

そうだ、私……石渡くんと約束してたの、すっかり忘れてた。


「ごめんね、大神くん私もう行かなくち……」


「行くなよ」


ギュっ。


今日3度目、彼に包まれる。

それは1回目の力強さもなくて、

2回目の余裕な言葉もない。


弱弱しく、黙って私を包むものだった。

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