生意気なキス
隙のない女
「とてもよくお似合いですよ」

 

化粧品カウンターで、新商品のアイシャドウを試された常連のお客様に笑顔を作る。 


デパートの中に入っている外資系化粧品メーカー、ここで私は美容部員として働いている。

 

「そうですか?じゃあ、このアイシャドウと、いつもの化粧水買っていきます」



鏡を見て満足そうに、にっこりと笑ったお客様。


自分に合う化粧品が見つかった時。
新しい化粧品をつけた時。
とにかくお客様に綺麗になったと満足して頂けた時の、心からの笑顔を見る瞬間が好き。


高いハイヒールを履き、足がむくむキツい立ち仕事も、訳の分からないクレーマーの相手もしなければいけないけれど、この瞬間のためにがんばれる。


大学を卒業して、一度は銀行に就職したものの、働き始めてから、昔から憧れていた美容関係の仕事につきたいという思いが強くなった。

思いきって転職して、美容部員として働き始めて三年。


給料は安くても、憧れていた仕事をして、
長い付き合いの同棲中の彼氏とも上手くいっている。

何も不満もないし、今の生活に満足している。
満足はしているのだけど......。

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