生意気なキス
愛嬌たっぷりなのに、生意気な彼がなんとなくおかしくなって、私も笑いながら、吸い終わった煙草を灰皿に押し付けた。


煙草を吸い終わると急に唇の乾燥が気になってきて、乾燥した唇に触る。

カラオケにくる前に一度口紅を塗り直したけど、煙草を吸ったりしていたら、唇が乾燥してしまった。


スマホのカメラ機能を鏡代わりにして、チェックすると、煙草を吸ったからか、やっぱり口紅がとれかけているし、乾燥が気になる。


リップクリームも口紅も、カラオケルームに置いてあるカバンの中。


人と話している時に失礼だけど、職業病なのか、いつでも綺麗な自分でいないと許せなくて、どうしても気になってしまう。



「どうかしたんですか?」


「唇の乾燥が気になって。
口紅とりに帰ろうかな」



もう少し話していたい気もするけど、とりあえずはいったん戻ろうと立ち上がると、彼に腕を捕まれた。



「唇にぬるやつなら、俺持ってますよ」



引き止められてもう一度座り直すと、巻き毛ちゃんはYシャツの胸ポケットから細長いものを取り出し、それを私に手渡した。

< 22 / 29 >

この作品をシェア

pagetop