生意気なキス
人を綺麗にする仕事をしているのに、自分は綺麗になることの楽しさが薄れてきたなんて、皮肉なものね。


どこか空しいような気がしなくもないけれど。

最初は新鮮でも、慣れてきたらどんなことでも新鮮さが薄れるし、こんなものなのかもしれない。


残り少ない時間を使って、スマホのチェックをすると、彼氏からのラインがきていた。

今日は遅くなる、と。

絵文字も顔文字もない。
なぜ遅くなるのか理由もなく、それだけ。

それに私も、分かったとそっけなく返す。


ケンカをしたわけではないけれど、昔よりもお互いに相手に関心がなくなった気がする。

同棲を始めてから、外でデートをすることもほとんどなくなった。

土日休みの彼氏とはあまり休みが合わないということもあるけれど、それにしてもデートをしていない。


同棲を始めてから三年。
大学の先輩だった二つ年上の彼氏とは、来月のクリスマスで付き合ってから八年を迎える。

八年も付き合えば、倦怠期にもなるわよね......。


別に不満があるわけでもないし、きっと慣れてきて、今は少し贅沢になっているだけ。
仕事も、恋愛も。


そう自分に言い聞かせながらも、物足りなさを感じながら、毎日を過ごしていた。
< 3 / 29 >

この作品をシェア

pagetop