生意気なキス
「それなら仕方ないわね。
お互いに、もっと相性のいい相手を探しましょう。

アパートはどうする?」


「明日にでも出ていくよ。
このまま住むか、新しい部屋を探すか、好きにしていい」



自分でもおかしくなるくらいに、冷静に明日からのことを考えていた。

ただ付き合っていただけなら、別れましょうで住む話でも、同棲しているのだから、そうはいかない。

住む場所やお金や荷物、別れ話をした直後にこんな話をしたくはないのだけれど、それでも現実的なことを考えなければいけなかった。

 

「もう少し家賃が安い部屋を、新しく探すわ。
二人で折半していた家賃を一人で払い続けるのは、難しいもの」


「分かった、俺の都合で出ていくわけだから、新しい部屋が見つかるまでの家賃は負担するよ」


「ありがとう、そうしてくれると助かる」



ほんの数分前まで恋人同士だったとは思えないくらいに、私たちはアパートの解約手続きやお金の負担はどうするか、事務的に話し合った。

私たちの八年間は一体何だったのかと思うくらいに、終わりなんてあっさりしたものね。
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