生意気なキス
「明日出ていくって言ったけど、場所はあるの?
見つかるまでは、ここにいていいのに」



事務的な話が終わると、すぐに自分の荷物をまとめ始めた彼氏......、いえ元・彼氏の背中を見ながら話しかける。



「友達のところに泊めてもらえるから、大丈夫だよ」


「......そう」



こちらを見もしない元彼氏。
私は何も気づかずに生活していたけれど、彼の中では前から、別れ話をすることはきっと決まっていたんだ。


一体いつから?
何がいけなかったの?


たしかに私たち倦怠期だったけど、それなりに上手くやっていたじゃない。


仕事から疲れて帰っても、彼のために料理を作ったし、部屋だっていつも綺麗にしていた。

彼のすることに文句を言うこともなかったし、服装もメイクも家でも気を抜くことはなかった。

いつでも彼の自慢の彼女でいれるように、努力していたのに。

どうして?


彼の背中に心の中で問いかけてみても、当然答えは返ってくることはない。


< 6 / 29 >

この作品をシェア

pagetop