生意気なキス
彼と目が合うと、気まずそうに彼が目をそらしたので、私も他人の振りをして、二人の横を通りすぎる。


見た目も可愛い系で、キレイ目の服が好きな私とはまるで正反対の彼女。 

ふわっとしたボブに、ピンクのチークに、青みがかったピンクのグロスをこってりと塗っていた。


通り過ぎても、まだ後ろから、媚びるような甘ったるい声が聞こえてきて、耳をふさぎたくなる。


自立した女が好きだと言っていたじゃない。
男に媚びたり、ぶりっこする女は好きじゃないんじゃなかったの?

本当はそんな女が好きだったの?


よりによって私と対極の女を選び、見せつけられ、なんだか一人きりの自分がすごくみじめに思えてきた。


エコバッグに詰めた野菜や飲み物が急に重く感じる。


早くここから去りたい、その一心で足早にアパートまでの道のりを歩いた。


< 9 / 29 >

この作品をシェア

pagetop