今日もまた、君を探す。
その日の夜も僕は公園へ向かった。
もう日課となっているので、勝手に体が動いた。
美優は大丈夫かな…。
公園には誰もいないと思っていた。

思っていたのに。


キィ…。キィ…。

ブランコの音が聞こえた。

美優?治ったのか?
…違う。美優じゃない。
真夜中のような黒髪。
月のような白い肌。
長い睫毛。

あれは、
美雨?

「美雨?」
とつい、呼んでしまった。

彼女はこっちを見た。
そして、微笑んだ。
その頬に、
えくぼはなかった。

「大和。」
懐かしい声が僕を呼ぶ。

美雨、美雨だ。
どうして今頃…。

「なん、で…?」
僕は聞いた。

それから色んな事を聞かされた。
また具合が悪くなって、遠くへ引っ越したこと。
それでいなくなってしまったこと。
先週ついに病気が治ったこと。
再発の心配はないこと。
そして、今日、この町に戻ってきたこと。

「大和、やっとまた会えたね。」

美羽が笑ってそう言う。
えくぼのない頬がつっかかった。

「待たせてごめんね。大好きだよ。」

やめてよ。
もう僕には大事な人がいるんだ。
なのに、なんで、否定できないんだ。
「もう君を好きじゃない。」
って、なんで言えないんだ。

それは、まだ、どこかで、期待していたから。
まだ、どこかで、会えると思っていたから。

美優と、美雨。
どっちを選べばいいんだろう。
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