恋色ミルクティー
バレンタインの次の日。
学校は幸せムードと悲しみムードにきっぱり分かれていた。
私は、終わっていない宿題に追われながら、教室に入ってくる人影を探していた。
橋本瑞稀。
『親友』と呼んでいいのかな?幸せムードの中の一人だ。

瑞稀には、付き合って6ヶ月になる彼氏がいた。
バレンタインデーの昨日、初おうちデートを敢行した……らしい。
私が公園で川崎くんから逆告白を受けている頃、瑞稀は彼氏の家にいたことになる。
瑞稀は、デート終了の夜9時頃にすぐメールをくれた。
詳しいことは聞いてないけど、メールの文面からすると、うまくいったんじゃないかと思われる。

教室のドアを開ける、見慣れた人影が見えた。
瑞稀だ。
高い身長。高い位置のポニーテール。
チア部!
という雰囲気を感じさせる。
その見た目の通りチア部の瑞稀は、クラスほぼ全員にスマイルと挨拶を振りまきながら自分の席についた。
「瑞稀!」
逆隣に座っている瑞稀に声を掛ける。
「あっ奈都、おはよー♪昨日、おめでと」
瑞稀の百パーセントスマイルは、こっちまで笑顔にさせられる能力がある。
無意識のうちに笑顔になりながら、私はお礼の返事を返した。
「昨日、どうだった?」
聞いてみる。
瑞稀は笑顔のまま、右手でVサインを作った。
「なになに、何したの?」
瑞稀は無言のまま、笑顔をキープしている。
言葉では言えない何かがあるんだろうか。
「……それがさ」
瑞稀が口を開いた。
「たまたま昨日、涼の親、いなくて」
涼というのは瑞稀の彼氏。
大抵男子は、二人っきりで親がいないとなると、誰であれ少なからずやましいことを考える生き物だ(と思う)。
瑞稀の彼氏は、学校に来ない不良を除いて学年内チャラ男ランキング上位に入りそうな人だし、変態男子ランキングでも上位ランクインを果たせそうだ。
「で?それは、行くところまで行っちゃった感じですか?」
ちょっとふざけた口調で聞いてみる。
瑞稀は少し間を開けてから、コクンと首を縦に振った。
「……!みーずーきー!!」
瑞稀の両肩を掴んで前後に振る。
「いやそんな、ちょっとだけだよ?想像を膨らませないで!」
瑞稀のほっぺたがピンク色に染まってる。

恋愛の、最初のステップを踏み出した私と、最後のステップまでの道のりを縮め始めている瑞稀。
二人の間に、2月の風が吹き抜ける。
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