幼なじみはイケメン4人組
体育館は通常の出入口の他、舞台袖へと直に入れるドアがある。
舞台袖は関係者以外立ち入り禁止だけど、出入口のところに居た茶髪の男子生徒は、どうやら晃太くんの知り合いらしい。
「政宗(マサムネ)、旬は居る?」
「居るよー」
「入っても平気?」
「おー」
政宗と呼ばれた男子生徒は休憩中だったらしく、地べたに座って携帯をいじっていた。
その人に頭を下げたあと、私と晃太くんは中へと入る。
舞台ではダンスを踊ってる人たちが華麗なステップを見せて、場は大いに盛り上がっている。
その人たちを袖からこっそり見たあと、舞台袖の隅の方に居た旬ちゃんをすぐに見つけた。
逆側の舞台袖に居るメンバーと無線でやり取りをしているらしく、スケジュール表を見て何かを書き込んでいる。
その傍らには同じ3年生と思われる女子生徒が居て……二人は仲よさそうに昼食を取っていた。
無線とペンとで手が塞がってる旬ちゃんに、サンドイッチを食べさせる女の子。
少し離れたところに居る私たちに、二人が気付くことはない。
……凄く楽しそう。 お似合いの、カップルだ……。
「……ご飯は必要なかったみたいだね。 晃太くん、戻ろっ」
晃太くんの袖を引っ張って、すぐに外に出る。
……あの場に居たくなかった。
旬ちゃんに気付かれたくなかった。
焼きそばのパックを持った私を、見られたくなかった。
「……そうだよねぇ。 さすがにこんな時間だもん、旬ちゃんだってご飯食べるよねっ」
「うん……そうだね」
「これどうしよっか? せっかくマーくんに貰ったのに、無駄になっちゃったや」
まだ温かいパックを両手で持ちながら、『困ったね』と笑みを見せる。
そんな私に晃太くんは微笑み、そのパックをそっと手から抜き取った。
そしてそれを、地べたに座っていた政宗さんへと手渡した。