はまきり




亜希は俺に近付くと、今度は小さな声で俺に耳打ちした。


「さっきのあれ、人に当たってたら間違いなく怪我させてた。あんたがどういう考え方なのか知らないけど…その、よく考えて。」


「……。」


亜希に俺のこと完全に見透かされていた。


入寮テストの時も、さっきのカマイタチのときも…俺は当たり前のように他人を傷付けた悠に疑問を持った。


でも、ここでは悠のような考え方が正しいのだ。


だけど俺は、悠のようにはなれなくて、だからさっきだって誰も傷付けずに終えたかった。


結果、上手くは行ったけど一歩間違えれば…


「あんた、自覚した方がいいわ。何の妖怪の血を引いてるか知らないけど、あんたの力は強力よ。…制御できないと、呑まれるわ。」


それだけ俺に告げると、亜希は俺から離れ、再びグミを食べ始める。






「そろそろ、時間ですね。放送の。」


悠は食べ終えた後の携帯食のゴミをポケットにしまいながら言う。


「放送って10分前じゃないのか?まだ20分前…」


「後半戦の連絡ではありません。20分前に行われるのは…選定終了の放送。」


スピーカーのスイッチの入る音がした。





『みなさん、お疲れ様です。後半戦の前に前半戦での脱落者を発表します。』









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