はまきり
「烏天狗って…」
「行きましょう、野添くん…ここは危険だから。」
かつてこの近くに来たことがあるという中谷さんの記憶を頼りに、俺たちは無事森を抜け出し、学校の正門まで戻ってきた。
正門付近にはもう誰もいなかった。
「さっきまであんなに人がいたのにな。」
「きっと、新入生のオリエンテーションが始まったんだと思いますよ。」
「そっかー…え?…あ!」
オリエンテーション!!
すっかり忘れてた…。
「まずい…オリエンテーションすぐ行かないと…!」
「え?でも…もうすぐオリエンテーション終わりますよ?」
中谷さんは俺に自分の腕時計を見せた。
「ほんとだ…」
「ごめんなさい、私のせいで…」
「いや、大丈夫。こっちこそごめん、中谷さん連れてきちゃって…今からでも少しなら参加できるし、行こっか?オリエンテーション。」
そう言うと、中谷さんは少し困ったように、そして申し訳なさそうに言った。
「ごめんなさい、私…内部進学で中等部から高等部に上がってきたからオリエンテーションないんです。」
「え?そうなの?」
コクリと頷く中谷さん。
「あの、オリエンテーションの後…お詫びと言ってはなんですが、校内を案内しますよ。」