はまきり




小学生のころから、無駄に足は速かった。


しかし、足が速いだけで運動神経が良いわけでもなく、別に部活動に入るわけでもなく、高校まで来てしまったものだから、せいぜい運動会で活躍するくらいだった。


役に立たない特技。


ただ足が速いだけ。


だからこんな所で役に立つとは思わなかった。







「よし!」






鵺はよろけながらも立ち上がった。


あんなに強く地面に叩きつけられたのに、体に外傷は見られない。


俺は神木と中原さんからなるべく離れた位置まで来ると、両手を広げて叫んだ。


「こっちだ!!」


鵺の耳が微かに動き、俺の方を向く。


さっきも見てたけど、こいつはそんなに動きが速いわけじゃない。


行ける…!






鵺がこちらに向かって突進してくる。


俺はそれをぎりぎりまで引きつけ、走り出す。











< 33 / 119 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop