はまきり
小学生のころから、無駄に足は速かった。
しかし、足が速いだけで運動神経が良いわけでもなく、別に部活動に入るわけでもなく、高校まで来てしまったものだから、せいぜい運動会で活躍するくらいだった。
役に立たない特技。
ただ足が速いだけ。
だからこんな所で役に立つとは思わなかった。
「よし!」
鵺はよろけながらも立ち上がった。
あんなに強く地面に叩きつけられたのに、体に外傷は見られない。
俺は神木と中原さんからなるべく離れた位置まで来ると、両手を広げて叫んだ。
「こっちだ!!」
鵺の耳が微かに動き、俺の方を向く。
さっきも見てたけど、こいつはそんなに動きが速いわけじゃない。
行ける…!
鵺がこちらに向かって突進してくる。
俺はそれをぎりぎりまで引きつけ、走り出す。