はまきり




中原さんは戦えない俺たちのために戦った。


だからせめて、時間を稼ぐくらいなら。






何度も何度も、引きつけては走るを繰り返した。


走るのは得意だが、持久力はあまりない。


たまに神木と中原さんの方を見るが、解毒が終わる様子はない。


早く…早く…


限界が近づいている。






早く…






「!!」






いつの間にか、スニーカーの靴紐が解けていたようだ。


紐を踏んでしまった俺は、体のバランスを大きく崩した。


身体が宙に浮く感覚、視界に広がる床…背後に迫る鵺の息の音。







だめだ…





俺、ここで死ぬんだ。






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