はまきり
「そうなんだ。中等部でもその遠足ってあるの?」
「ありますよ。日にちはバラバラで1学年ずつやりますが、ルールは同じです。」
「そうか、じゃあ中谷さんは4回目になるのか。」
「そうですね…」
中谷さんの表情が少しだけ曇った。
「どうかしたの?」
「いえ…この遠足、課題自体はすごく楽しいんですよ、でも私…毎年組が作れなくて。」
中谷さんはぎこちなく笑顔を作る。
そういえば、中谷さんと初めて会った時も様子がおかしかった。
中谷さんの後ろから現れた女子生徒たち…あれは友達ではないだろう。
恐らくだけど、彼女は…
「あの、よかったら…俺と組まないか?」
「え?」
「遠足の組、誰と組んでもいいんだろ?」
「そうですけど…いいんですか?」
「もちろん。」
「…ありがとうございます。」
初めて、中谷さんが自然な笑顔を見せてくれた気がした。
「あの、野添さん…」
中谷さんは俺に何かを言いたいようだが、口籠っていた。
「えっと…」
「なに?」
「私のことは悠でいいですよ。」
中谷さんは少し頬を赤らめながら俯きがちにそう言った。