恐怖へいざなうメールはいかが~from.ミチカ
「き、気にしてなんか、いないっ!か、貸してくれた、お礼だよ」
森田はハアと一息つくと、私が貸したハンカチでゴシゴシと顔をふいた。しかし汗は次から次へと噴き出し、まったく止まらない。さきほどの追求に、激しく動揺しているらしい。そんな彼は、妙にかわいかった。
 ふいにドキッ、とした。
「・・・!」
長い前髪の隙間から見えた目は、思いの外切れ長で、綺麗な二重だった。まつげも長く、鼻だってけっこう高い。ちゃんとおしゃれをすれば、それないにカッコイイのかもしれない。
(や、やだ!私、何コイツにときめいてんのよ。森田は暗くてキモイ男なのよ。たぶん、友達だっていない。そんな男に胸キュンするなんて、どうかしてる!こんな事知ったら、みんなにバカにされる!)
私は視線をそらすと、大きく息を吐き出した。そんな態度に森田は少しも気付かず、相変わらず汗をふきながら、『か、必ず明日返すから!』と念を押すよう言った。
 結局、森田への胸キュンに動揺した私は、謝るどころかお礼を言う事すら出来なかった。
 お互い熱冷めやらぬままロクに口をききもせず、バイト先の側にあるインターネット・カフェへやって来た。ここへ来る途中、何人もの人とすれ違ったが、皆、『かわいそうに』と慈悲の目で見ていた。私は疲れて無表情だったし、森田は汗だくだったので、ケンカ中のカップルとでも思ったのだろう。
 店内は、ガラガラだった。成人していると思われる男性が数人いるだけだった。時間的にまだどの学校も授業中なので来られないのだ。制服姿の人がいれば、明らかにサボりだろう。
 そうまでして私達がここへ来たのは、私の携帯電話は色んな意味で使えないし、森田は携帯電話を持っていない。かつ、彼はパソコンを持っているが、親しくないのに自宅へ行くのは失礼だと思った。だったら、インターネット・カフェへ行って調べようと思ったのだ。
 森田は店の一番奥に並んだパソコンを選ぶと、もっとも壁際の席を選んだ。私の事は、隣の席に座らせてくれた。
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