恐怖へいざなうメールはいかが~from.ミチカ
 私はグッタリして背もたれに寄りかかると、店の入り口脇に置かれていた自動販売機で買った炭酸飲料を飲んだ。恐怖にさらされ、とても喉が渇いていた。渇いた喉に炭酸の発砲は、とても爽快だった。
 森田は私と自分の荷物を机の下にジャマにならないよう置くと、『いただきます』と言って、私が買ったのと同じ炭酸飲料を飲んだ。彼が飲んでいるジュースは、私がごちそうした物。世話になってばかりでは悪いと思い、少しだがお返ししようと思ったのだ。
「じゃ、さっさと調べようか」
「よろしくお願いします」
「うん、まかせて」
森田はうなずくと、軽やかな指の動きでキーボードをたたき、『浄霊』と打ち込み、マウスを使って検索のボタンをクリックした。
「浄霊?お祓いじゃないの?」
「ああ。払いは一時的に今川さんの体から霊を離すだけだから、また戻ってきて悪さをするんだ。でも浄霊は、その霊が持っている怨念を燃焼…つまり燃やし尽くすから、成仏させる事が出来る。二度と悪さをしなくなるんだ」
「ああ、なるほどね」
私はうなずきつつ、すごく緊張してパソコンの画面を見た。私の持っている携帯電話はまったく動かなかったので彼に調べてもらうよう頼んだのだが、悪霊が憑いている私が側にいれば、その影響で動かないかもしれないと思ったのだ。
 しかし、いともたやすく画面は開いた。まるで悪霊が憑く前の私のように。
 痛い目にあってきた私は信じられず、周りをドキドキして見た。いつもミチカから来たメールや、お祓いに関する内容を調べようとしたら誤作動を起こし、その後すぐに悪霊が見えた。
(よかった、見えない!)
森田は様々なサイトを開き、時折メモを取りながら画面を上下にスクロールさせ調べていたが、悪霊の姿はまったく見えなかった。パソコン画面の右下に表示されたデジタルの時計が五分、十分と進んでも、やはり見えない。気配すら感じない。恐る恐る鞄を開け中にしまってある携帯電話を見ても、黒いモヤはかかっていなかった。
(私が調べていなければ、大丈夫なのかな…)
少しホッとした。
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