恐怖へいざなうメールはいかが~from.ミチカ
 とたん、森田は私を見た。彼は興奮していた。
「少し遠いけど、いい陰陽師を見つけたよ。電話でも浄霊できるみたいだけど、やってみる?」
「でっ、電話はイヤ!悪霊につかまっちゃうかもしれないし…」
「わかった。じゃ、直接会いに行って浄霊してもらうよう依頼するね。…少しでも早いほうがいいと思うんだけど、依頼のメール送ってもいいかな?」
「えっ?浄霊料、私のバイト代で払える金額なの?すごく高いんじゃない?」
「うん、安くはないね。でも、ここが一番料金設定が安いんだ。これ以上は望めない」
「…親は、頼れないんだ。自分で何とかしなきゃいけないの。だから、あまりにも高すぎると払えない」
「今川さんも、僕と同じなんだ」
「え?」
寂しそうに呟いた森田の言葉にハッとした。森田はちょっとビックリしたが、すぐに申し訳なさそうに視線をそらした。
「同じって…」
「僕、産まれてすぐからずっと霊が見えているんだ。すごくハッキリと。この力のせいで、家族や学校の担任の先生とずいぶんモメた。誰も霊が見えてなかったから。だから昔、霊に苦しめられて辛かった時も、浄霊してもらう費用を出してって、お願い出来なかった。道ばたを歩いていたら霊がフラフラ寄ってきてつかみかかられそうになったり、寝ている部屋の天井が見えなくなるくらい手形を付けられて怖くて眠れなくても、お願いできなかった。小さい時は、ただガマンした。少し大きくなったら図書館へ行ったり、インターネットを使って、霊を寄せ付けない方法を探して、今までどうにか過ごしてきた。みんな僕の恐怖を信じてくれなかったから…」
「そう、なんだ」
森田は首を大きく縦に振った。そして、通学鞄の中から財布を取り出すと、私の前に差し出した。
「少ないけど、このお金、使って」
「い、いいわよ。私、バイトでバリバリ働いているから、けっこうお金持っているんだ。何十万もしなければ、払えるよ」

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