恐怖へいざなうメールはいかが~from.ミチカ
 あきらかに、オシャレだ。オシャレするのが、好きだ。
 オシャレじゃない上、今まで興味を持った事がない森田は、ちょっと失敗すると取り返しの付かないことになりそうだった。
(自分でやってはいけない。絶対ヤバイ展開になる!だから理容室…いや、がんばって美容室へ行って、流行りの髪型に切ってもらおう!)
頭の中に、昨日来た無料情報誌が浮かんだ。その情報誌には、飲食店や居酒屋、美容室の情報が沢山掲載されている。割引クーポンも付いていて、それを使えば安く切る事が出来る。美容室など生まれてから一度も行った事がない森田にとって、頼りがいのある雑誌だった。
(まだ夕飯まで時間がある…あの雑誌、たしか茶の間にあるマガジンラックに入っていたよな。善は急げだ。早速調べに行こう!)
しかし、本当にうまくいくかわからない。切ってもらっている場面を想像すると緊張した。考えを振り払うよう頭を左右にぶんぶん振ると、足早に部屋を出ようとした。
 ふと、浄霊依頼をした陰陽師から返事が来ているかどうか、気になった。
(メールのチェックくらい、すぐに出来る。ちょっと見てみるか)
机の上に置きっぱなしになっているノートパソコンを開き、立ち上げた。インターネットをつなぐとログインし、メールが来ているかどうか確認した。
 新着のメールは三通。うち一通が、陰陽師からのものだった。
(依頼、受けてくれているといいんだけど…)
一抹の不安を覚え、メールを開いた。読み進めていくうち、森田の表情はだんだん堅くなった。
「マジで?」
メールを最後まで読むと、しばらくの間、視線を落ちつき無くさまよわせた。アゴに手をやり固まったかと思えば、ふいに陰陽師へ返信のメールを打ち、送信した。
 パソコンの電源を落とすと、財布を持って部屋を飛び出した。玄関で慌てて靴を履けば、乱暴にドアを開けた。
「喜一、どこへ行くの?」
母がビックリして茶の間から顔を出した。手には、夕飯でも作っていたのか、フライ返しが握られていた。
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