恐怖へいざなうメールはいかが~from.ミチカ
 お守りは、とある高名な霊能者がテレビに出演している時に作り方を教えていた物で、材料も簡単に手に入り、簡単に作れた。半信半疑だったが、身につけて外に出ると霊は寄ってきても触れる直前で去っていった。
(これは効いている。やった!この守りがあれば、外出する時もビクビクしないですむ!)
お守りは肌身離さず首からぶら下げ、いつも持ち歩いた。この事は森田以外、誰も知らない。家族さえ知らない。
 結局、今のところ森田の能力は、負のエネルギーに支配されていない霊達の伝えたい思いを伝えるくらいしかできなかった。
 六月中旬の晴れ渡った空の下、いつものように授業を終えると普段通り下校し、バス停へ向かった。ただ、顔はうつむき加減。これが森田の日常スタイル。『一人の世界』に入っているモード。あまりの暗い雰囲気に、用がない限り誰も声をかけて来ない。おかげで望み通りの人生を送れていた。
 バスは家へ帰る方向とは逆の、街中へ向かう路線に乗っていた。
(今日は待ちに待った『アリウープ!』十巻の発売日だ!全部売れていなきゃいいな)
愛読している週刊マンガ雑誌で連載しているバスケットマンガのコミックス最新刊が今日発売になる。たまには身の安全を考えるのをやめて、リラックスしたかった。
 バスは塾へ行く生徒や、帰宅部の生徒でそこそこ込んでいた。もちろん霊も乗っている。森田が通っている高校の夏の制服を着た女生徒だ。いつものように、運転手のすぐ後ろにあるつり革に捕まって外を眺めている。彼女はこの路線のバスに乗ると必ず見かけた。年中夏の制服を着ているので、入学間もなく覚えた。
(今日もいるなぁー。ウチの学校、よほど気に入っているんだろうなぁ)
目を合わせないよう気をつけているので、どういった経緯で亡くなり、この世に執着しているのかは、わからない。
(ま、成仏させてあげるだけの力がないから、わかりたくもないけどね)
森田はチラリと霊を見て外の景色を眺めた。
 ほぼ予定通り街中に着くと、他の生徒に混ざって降りた。霊はチラリと森田を見たが、すぐ何事もなかったかのように外を眺め、バスと共に去っていった。
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