恐怖へいざなうメールはいかが~from.ミチカ
バス停から目的地の本屋までは、百メートルくらいの距離がある。停留所の南側にある大通りまで二十メートルほど進み、右に曲がって五十メートル歩けば、交差点にぶつかる。その交差点を渡ってシスタードーナツというファストフード店の前を通り過ぎれば、隣に三階建ての白いビルが見えてくる。そこが本屋だ。
(帰りにシスタードーナツに寄っていくかな。アリウープ!が出るのをすごい楽しみに待っていたから、家まで読むのをガマンできない!コーラでも飲みながら一回目読むぞ!)
昨日、今月の小遣いをもらったばかり。財布の中身が潤っているのを良い事に、プチ贅沢をする事にした。考えると嬉しくて、顔がニヤけた。
ところが大通りまで出ると、突然冷たい風が体を包み、激しく身震いした。今日は久々に良い天気で、歩けば軽く汗ばむほど暖かい。周りを見ても半袖の人ばかり。寒そうに肩をすくめている人は一人もいない。
(カゼ、ひいたかなぁ…今朝、タオルケットをかけないで寝ていたからなぁ)
いつまでたっても風を暖かく感じないので、そう思わずにいられなかった。
(シスタードーナツに寄って行くのはやめて、アリウープ!の十巻だけ買って帰るか)
ブルブル震えながら交差点の前で待っていると、ふと嫌な考えがひらめいた。
(もしかして…近くに『アレ』がいるのか?)
ドキッとして四方八方を見渡す。特に変わった様子はない。…いや、あった。周りにいた霊達が『ヒイッ!』と悲鳴を上げて逃げていくのだ。
(久々にヤバイのが来たのかもしれない。帰った方がいいかな?)
歩行者用の信号が青になると、交差点の前で並んだ人が一斉に横断歩道を渡りだした。すると、交差点の向こう、シスタードーナツの斜め前に置かれたベンチに一人で座る女子高生が目にとまった。
バストラインまで届くストレートの長い髪を耳にかけ、赤いピンで留め、森田の通う高校の制服を着た女子生徒だ。彼女は手に携帯電話を持ち、じっと画面を見つめピクリとも動かない。
そんな彼女の顔を見た記憶は、ない。
(帰りにシスタードーナツに寄っていくかな。アリウープ!が出るのをすごい楽しみに待っていたから、家まで読むのをガマンできない!コーラでも飲みながら一回目読むぞ!)
昨日、今月の小遣いをもらったばかり。財布の中身が潤っているのを良い事に、プチ贅沢をする事にした。考えると嬉しくて、顔がニヤけた。
ところが大通りまで出ると、突然冷たい風が体を包み、激しく身震いした。今日は久々に良い天気で、歩けば軽く汗ばむほど暖かい。周りを見ても半袖の人ばかり。寒そうに肩をすくめている人は一人もいない。
(カゼ、ひいたかなぁ…今朝、タオルケットをかけないで寝ていたからなぁ)
いつまでたっても風を暖かく感じないので、そう思わずにいられなかった。
(シスタードーナツに寄って行くのはやめて、アリウープ!の十巻だけ買って帰るか)
ブルブル震えながら交差点の前で待っていると、ふと嫌な考えがひらめいた。
(もしかして…近くに『アレ』がいるのか?)
ドキッとして四方八方を見渡す。特に変わった様子はない。…いや、あった。周りにいた霊達が『ヒイッ!』と悲鳴を上げて逃げていくのだ。
(久々にヤバイのが来たのかもしれない。帰った方がいいかな?)
歩行者用の信号が青になると、交差点の前で並んだ人が一斉に横断歩道を渡りだした。すると、交差点の向こう、シスタードーナツの斜め前に置かれたベンチに一人で座る女子高生が目にとまった。
バストラインまで届くストレートの長い髪を耳にかけ、赤いピンで留め、森田の通う高校の制服を着た女子生徒だ。彼女は手に携帯電話を持ち、じっと画面を見つめピクリとも動かない。
そんな彼女の顔を見た記憶は、ない。