恐怖へいざなうメールはいかが~from.ミチカ
ミチカは大声で叫んだ。とたん、店のガラスと言うガラスがバンッ!と音をたて、粉々に砕け散った。
「キャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァーッ!」
私達は頭をかかえ叫んだ。砕け散ったガラスが、通り雨のように激しく降りかかってくる。
 しかし目の前に立つ陰陽師はひるんだりせず、袖でガラス片を凌ぎながらミチカをにらみつけた。
「そのままでは魔界の深い場所へ落ち、もっと辛い目に遭うぞ。己の行いを悔い改め、神仏の元へ行け」
『イヤダ!一人デナンテ行キタクナイ。春乃サント一緒ニ行ク!』
ミチカは叫ぶなり両手を肩の高さまであげ、私に向かってロケットのように手を飛ばしてきた。体をつなぐ腕がホースのように伸び、シューッと音をたてて近付いて来る。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
私は恐ろしくて、目をつぶると両手で頭を抱え込んだ。
 すると、森田はミチカから私を隠すよう、前から抱きしめてくれた。しかし、さきほど見た彼女の力を考えると、森田に攻撃を防げるとは思えなかった。
 再び、命を落としそうな気がした。半分、死を覚悟した。
 ところが、いつまで待ってもミチカの手は襲ってこない。かわりに『グゥゥゥゥゥ』
と犬がうなるような野太い声が、聞こえてきた。
 恐る恐る見れば、ミチカの伸ばした手は私の一メートルほど手前で止まり、歯を食いしばっていた。対峙した陰陽師は口の前で左手の中指と人差し指を立て、印を結び、ニラみをきかせながら呪文を唱えていた。ミチカの攻撃は陰陽師によって食い止められたのだ。私は少しホッとし、緊張をはき出すようため息をついた。
『ニックキ陰陽師メ、ドコマデ私ノ邪魔ヲスル!』
「成仏すると言うまでだ。言うまでお主を押さえつけ、攻撃する」
『・・・!』
陰陽師が印を結んでいる右手を素早く前へ出すやいなや、ミチカの手は伸びていたゴムが縮むようすごい勢いで戻り、その勢いで体は後方へのけぞった。
 
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