恐怖へいざなうメールはいかが~from.ミチカ
「でも、放っておいたらお父さんが捕まっちゃう。魂を抜かれて死んじゃうよっ!」
「私が助けに行くわ」
すると、側で黙って見ていた母が、父の後を追って走り出した。
「母さん!」
母もものすごいスピードで走った。父同様、信じられないスピードで。
 そして魔界の住人は、母へも容赦なく触手を伸ばしてきた。住人の手は五十本以上あり、二手に分かれても容易に捕まえるだけの数があった。何より、魔界へ取り込む魂の数が増える。がんばらない手はない。
「放して森田君!母さんまで捕まっちゃう!」
私は狂ったように叫び、暴れた。両親が目の前で、しかも一瞬で命を落とすなど絶対イヤだった。助けに行きたかった。
「大丈夫、きっと陰陽師が助けてくれる!陰陽師はそのために来たんだ。信じよう!」
「信じられないよ!こんなひどい状況なのに、どうやって助けるって言うのよ!」
「でも今川さんが行っても、捕まってしまうだけだ。お父さんはそうならないために、カウンターへ向かって走ったんだろ?お父さんの努力が無駄になってしまう」
「森田君は自分の親じゃないから、そんな悠長な事を言っていられるのよ。自分の親が目の前で殺されかかっていたら、おとなしく救世主なんて待っていられない。自分で何とかしなきゃって思うわよ!」
「そうだね、うん。そう思う。でも、だからこそ、僕は今川さんに冷静な判断をさせなければならないんだ。今出ていけば、絶対魔界の住人に捕まって、全員助からない。そのすべを持っていないから」
「そんなの、やってみなければわからないじゃない!やりもしないうちから否定的な事言わないでよ!」
とたん、魔界の住人の手が父を捕らえた。立て続けに母も捕まえた。あっという間に手でグルグル巻きにされれば、二本の手で口をこじ開けた。
「ダメッ!父さんと母さんの魂を取らないでっ!」
さすがに森田も息を止めた。絶対絶命だ。私の体は信じられない状況にガタガタと震えた。
(もうダメ。ダメだ…)
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