恐怖へいざなうメールはいかが~from.ミチカ
「ここだけ平安京?着物なんか着ちゃって」
「蹴鞠とかできそうじゃね?『ワレは楽しいでおじゃる』とか言って」
「そうそう!マジうけるぅーハラ痛ぇー!」
「あ、それとも。もしかしてドラマの撮影とかやってんの?」
「うっそ!オレ通行人でいいから出てぇ。出してよ、おっさん。ノーギャラでいいから出してくれよ」
「再度、警告する。後悔する前に、早急に立ち去りなさい。これはドラマの撮影などではない。現実だ。いつ事態が暗転するかわからな…」
ふいに陰陽師はハッとすると、慌てて印を結んだ。
「…おい、山口。どうしたんだ?おい、山口。返事しろよっ!」
青年のうちの一人が突然、目を見開いたかと思うと、目の前で前のめりに倒れた。
「キャッ!」
私は悲鳴を上げ、口元を押さえた。陰陽師は眉間にシワを寄せ倒れた青年を見ると、残った青年を見た。青年は倒れた山口の元へひざまずき、必死に揺すりながら『大丈夫か!』と声をかけていた。
「その者は今、あの世とこの世の狭間にいる」
「狭間?狭間ってどこだよ」
「あれを見よ」
青年だけでなく、私達も陰陽師が指さす方を見た。
「・・・!」
そこには、倒れている青年とそっくりな、だが向こう側が透けて見える青年が立っていた。青年は困った顔をして、こちらを見ていた。
 最悪な事に、青年の隣には、不気味な笑顔をしたミチカが立っていた。意識が戻ったのだ。弱っている気配もない。
 ミチカの右手を見れば、分かれたうちの一本は刀のような形をしていて、鈍い光を放っていた。
「あの化け物の側に立っているのが、倒れている青年の魂だ」
「山口の魂!」
「どうやら、あの刀で肉体と魂を切り離されたようだ」
「切り離したって…山口は、山口はどうなっちまうんだよ!」
「あそこに黒い手が沢山出ている穴があるだろう。あそこに落ちる前に魂を体へ戻し術を施せば助かる。さもなくば…」
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