恐怖へいざなうメールはいかが~from.ミチカ
「あっ!」
私も、森田も、父も、母も、思わず叫んだ。あまりにも早く大胆な攻撃に、陰陽師が負けそうな気がした。
 陰陽師は私達の心配をよそにヒラリと刀をかわすと、右手で印を結び右横へはらった。するとミチカの体は何かにどつかれたように右横へ大きく傾き、ヨロヨロとよろめいた。
『マダマダッ!』
ミチカは体勢を立て直すと、『やってやる』と言わんばかりに再び頭の上で刀を構え、飛び上がりざま斬りかかった。これも陰陽師はヒラリとかわし、印を結んだ手をおもいっきり下から上へ振り上げた。とたん、ミチカはアゴをのけぞらせ倒れそうになった。陰陽師が印を結んだ右手を動かすたびに、目に見えない力が攻撃を仕掛けているようだ。
「いける…いけるかも!」
私は小声で叫んだ。森田も父も母もうなずいた。陰陽師の言った事はハッタリではなく、本当の事だったのだ。
 陰陽師は波に乗るよう、さらに攻撃を仕掛ける。ミチカがヨロヨロと立ち上がると、腹の底から絞り出したような力強い声で呪文を唱え、印を結んだ手を前へ突き出した。
『グゥッ!』
突然ミチカは、濁った黄色い目を全開にし、目をギョロギョロさせ、全身を硬直させた。『ウグーッ、ウグーッ!』とうなって体を動かそうとするが、ピクリとも動かない。
「さしものお主も、全身を呪文で縛られては動けぬだろう。…これから二つの提案をする。受け入れれば、呪縛を解く。どうだ、一考してみぬか」
陰陽師の言葉にミチカは、いまいましげな視線を向けた。陰陽師はピクリとも表情を変えない。毅然とした態度でいる。
「一つ。私がそなたの怨念を燃焼し、成仏して神仏の元へ行く。二つ。このままその少女を手に入れようとし、魔界の深い場所へ落とされ縛り付けられる。さあ、どちらを選ぶ?」
『決マッテイルダロウ、ドチラモ選バヌ。オ前ヲ倒シ、春乃サント共ニ魔界ヘ行ク!』
「たとえお主が百人分の魂を抜き取ったとしても、行いを悔い改めない限り、誰とも同じ場所へは行けない。魂を抜き取る事は、大罪だ。そのままでは、お主は魔界の深い場所へ行き、成仏への道は険しくなる」
『何ダト!』
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