恐怖へいざなうメールはいかが~from.ミチカ
『ジャア抜クヨ、春乃サン』
三人の、ノドが避けてしまいそうな叫び声に動じる事なく、ミチカはクールに言った。私はコクリとうなずいた。
私は呼吸を止めた。いや、全員が呼吸を止めた。
―世界が、止まったような気がした。―
ふいに、静寂を打ち破るよう、携帯電話の着信メロディーが流れだした。張りつめた空気とは逆の、和やかなクラッシック。モーツァルトの四季だ。
その着信メロディーは、父が持っている携帯電話の、メールが着信した時鳴るよう設定したものだ。数え切れないほど聞いたので、間違いない。驚いて目を開けると、父をグルグル巻きにしていた化け物の手が、急にほどけだした。
『何ヲシテイル!ソノ男ヲ シバレ!』
『ソレガ デキナインダ!誰カガ私ヲ操ッテイルミタイ ナンダ』
ミチカとイジメッ子が話している間も父を縛っていた腕はほどけ続け、バタバタと床へ落ちた。床へ落ちると二度と動こうとせず、眠ってしまったように見えた。また、他の魔界の住人も襲ってこようとしなかった。
見ていたミチカは苛立ち、私の口の中から手を引き抜くと、父を襲おうとした。しかし触れる寸前で弾かれ、触る事さえできない。先ほどイジメッ子が言ったように、何か不思議な力が働いているようだった。
狐につままれたような気持ちで様子を見ていたら、再び父の携帯電話が鳴った。またメールを着信下らしい。父はズボンの右ポケットから慌てて携帯電話を取り出すと、二つ折りの画面を開いて操作し、目を皿のようにしてメールを読んだ。すると、父は眉間にシワを寄せ考え込んだ。
「どうしたの?誰からメールが来たんだい?何とか言いなさいよ!」
母はキレたように叫んだ。
「いや、着信したメールの送り主なんだが…知らない人なんだ。こんな名前見た事ない」
『誰ナンダ!』
ミチカはイラだって叫んだ。
「…クズミ リリコって、人だ」
父が名前を言ったとたん、ミチカはハッとし、視線を泳がせた。明らかに動揺している。私の口を閉まらないようつかんでいた手まで放してしまった。私は助かった事よりミチカの反応が気になり、思わず側にいた森田を見た。
三人の、ノドが避けてしまいそうな叫び声に動じる事なく、ミチカはクールに言った。私はコクリとうなずいた。
私は呼吸を止めた。いや、全員が呼吸を止めた。
―世界が、止まったような気がした。―
ふいに、静寂を打ち破るよう、携帯電話の着信メロディーが流れだした。張りつめた空気とは逆の、和やかなクラッシック。モーツァルトの四季だ。
その着信メロディーは、父が持っている携帯電話の、メールが着信した時鳴るよう設定したものだ。数え切れないほど聞いたので、間違いない。驚いて目を開けると、父をグルグル巻きにしていた化け物の手が、急にほどけだした。
『何ヲシテイル!ソノ男ヲ シバレ!』
『ソレガ デキナインダ!誰カガ私ヲ操ッテイルミタイ ナンダ』
ミチカとイジメッ子が話している間も父を縛っていた腕はほどけ続け、バタバタと床へ落ちた。床へ落ちると二度と動こうとせず、眠ってしまったように見えた。また、他の魔界の住人も襲ってこようとしなかった。
見ていたミチカは苛立ち、私の口の中から手を引き抜くと、父を襲おうとした。しかし触れる寸前で弾かれ、触る事さえできない。先ほどイジメッ子が言ったように、何か不思議な力が働いているようだった。
狐につままれたような気持ちで様子を見ていたら、再び父の携帯電話が鳴った。またメールを着信下らしい。父はズボンの右ポケットから慌てて携帯電話を取り出すと、二つ折りの画面を開いて操作し、目を皿のようにしてメールを読んだ。すると、父は眉間にシワを寄せ考え込んだ。
「どうしたの?誰からメールが来たんだい?何とか言いなさいよ!」
母はキレたように叫んだ。
「いや、着信したメールの送り主なんだが…知らない人なんだ。こんな名前見た事ない」
『誰ナンダ!』
ミチカはイラだって叫んだ。
「…クズミ リリコって、人だ」
父が名前を言ったとたん、ミチカはハッとし、視線を泳がせた。明らかに動揺している。私の口を閉まらないようつかんでいた手まで放してしまった。私は助かった事よりミチカの反応が気になり、思わず側にいた森田を見た。