恐怖へいざなうメールはいかが~from.ミチカ
 森田は思いをぶつけるよう、悪霊をにらんだ。だが当の女子高生は満面の笑みで再び携帯電話を見つめ、『ウフフ』と笑った。そして、驚くほどの早さでメールを打ち出した。目の前に立った森田の事は、少しも気にかけようとしない。
(悪霊が取り憑いた携帯電話なのに。悪霊が取り憑いた携帯電話なのに!いや、怒っている場合じゃない。早く取り上げなければ危険だ!)
脳天気な彼女に森田はイライラしながら、ワイシャツの中からお守りを引っ張り出した。鞄を足下に投げ捨てれば、左手でしっかりと握った。
(ゴメン。君のためだから、悪く思わないで!)
女子高生に心の中で謝ると、足を肩幅に開き覚悟を決めた。一度深呼吸すると、右手でいっきに彼女の携帯電話を取り上げた。
『ギェェェェェェェェェェッ!』
悪霊は叫びながら襲いかかってきた。森田は左手で握ったお守りを顔の前でかざし、目をつぶった。
「あ、あんた、何するのよっ!」
携帯電話を取り上げられた女子高生の、ものすごく怒った声が聞こえた。それと同時に、お守りを持った左手に何かがドンッ!とぶつかった。
 とたん、手の中のお守りがバンッ!と勢いよく破裂した。
『グゥワァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!』
「きゃあっ!」
目を開けると、女子高生もベンチも灰まみれになっていた。お守りの中身は御神酒と灰を練り合わせた物。化け物に触れた瞬間、森田と女性高生を守るよう破裂し、飛び散ったのだ。周囲の人も何事かと足を止め、見ている。
 悪霊はお守りが効いているのか寄ってこない。女子高生の頭上五メートルの所で浮き、様子をうかがっている。考えていた以上の効力だ。
『コシャクナ ガキメ!シカシ、コレデ アキラメタト思ウナ。ソノ女ノ魂ハ、必ズモラウ!』
悪霊は捨て台詞を吐くと、煙のように消え去った。森田はようやくほっとして肩の力を抜いた。
(あの様子なら、また彼女の元へ現れるに違いない。早く携帯電話を処分しなければ!)
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