恐怖へいざなうメールはいかが~from.ミチカ
『ソウダ ソウダ!』
『寝ボケルノモ イイカゲンニシロ!』
イジメッ子達は代わる代わるミチカを罵倒した。しかしミチカは変わらず、胸の前で手を合わせ続けた。
 とたん、何も無い天井から、まばゆい光が差し込んできた。
「あの光、どこから出ているの?」
「まさか…天国?」
天井から差し込んできた光は床までたっぷりと降り注ぎ、ミチカを柔らかく包んだ。まるで天国へいざなうかのように。ミチカの表情もとても穏やかで、さっきまで私達を襲っていたとは思えないほどだった。
(これで成仏してくれたら、私もやっとホッとできる)
考えただけで心が和んだ。
 そんな時、黒くて長い手が何本もミチカの体に巻き付いた。イジメッ子達と、魔界の住人だ。
『私達モ天国へ連レテ行ッテ!』
『魔界ハ暗クテイヤ!』
『寂シクテ イヤ!』
『エエイ、放セッ!』
ミチカは体を捻り、ほどこうとする。しかし巻き付いた手はしっかりと絡まり、どうしてもほどけない。追い打ちをかけるよう、魔界への入り口からも住人が手を伸ばしてきた。
『シツコイ!』
ミチカは縛られたまま、指先から激しい光を発し切っていく。だが襲ってくる手の数が多すぎて、切断が追いつかない。気が付けば陰陽師と同じく、巻き付いた手で蚕のようにふくらんでいた。
 絡んだ手が重いからなのか、ミチカは全く天国へ上がっていけない。いっそのこと、手を絡ませた住人やイジメッ子達ごと成仏させて欲しいが、そこまで天国は余裕がないのか状況は少しも変わらない。
「どうしよう…このまま成仏できなかったら、またミチカに脅される日々が続く。何とかして助けなきゃ」
「無理だよ。陰陽師を倒したミチカを押さえ込んでいるんだ。僕たちが行っても、魂を取られるだけだ」
「逃げた方がいいんじゃないのか?」
「そうね、化け物はみんな、天国へ行こうと必死だわ。私達に注意を払っている奴らは誰もいない。逃げるなら今がチャンス…」
< 160 / 202 >

この作品をシェア

pagetop