恐怖へいざなうメールはいかが~from.ミチカ
突然、バッターン!と何かの倒れる音がした。絡んだ手が足をすくったらしい。
『何ヲスル!』
ミチカはキレたように叫んだ。しかし、黒い手は離れない。グルグル巻きににしたまま、下の方へ引きずっていく。
「もしかして…」
下の方には、魔界への入り口がある。天国の光も追いかけてこないので、このまま引きずられていけば確実に魔界へ落ちてしまう。イジメッ子と魔界の住人達は、自分が成仏するために、ミチカと言う邪魔者を消すつもりらしい。
 落ちれば仲間に押さえつけられ、魔界の奥深くに縛り付けられ上がってこられないかもしれない。
 成仏、できないかもしれない。
(困る、すごく困る!)
「何か、何か助ける方法はないのかな。ミチカを助ける方法はないのかな?」
「今川さん、あきらめよう。今のうちに逃げて、他に浄霊してくれる人を探そう」
森田は私の手をつかみ引っ張った。私は必死に振り払おうとした。
「いやよ!また霊に脅える生活なんてしたくない!せっかく天国からの光が差し込んでいるんだもの。このチャンスを逃したくない!」
「でも、このままいたら、今度こそ魔界へ連れて行かれるかもしれない。それでもいいのか?」
「そうだ、春乃。森田君の言うとおりだ。死にたくないのなら逃げよう!」
「イヤ、絶対イヤッ!」
私は体全部を使って森田の手を振り払おうとした。森田はとても困っていた。
「まいったな、どうすればいいんだ。…こんな時、知り合いに霊能者がいたらいいのに。そうしたらお父さんの携帯電話を借りて、電話かメールで打開策くらい聞けるかもしれないのに」
「メール?」
私はふいに、あるアイデアをヒラめいた。
(…いけるかもしれない)
「お父さん、携帯電話貸して」
「こんな時に、どこへかけるって言うんだ?」
「クズミ リリコへ、メールを送るの」
「メールを?送ってどうするんだ?」
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