恐怖へいざなうメールはいかが~from.ミチカ
『本当デス、信ジテ下サイ!』
「あれを見て、今川さん!」
森田に言われるまま足を止めると、光はさらに強くなり、浴びたイジメッ子達の姿は消えていった。一分もすれば完全に消え、光も元の明るさに戻った。一瞬の出来事だった。残ったのは魔界の住人だけ。悔しそうにウネウネするが、どうしても成仏しない。体が魔界につながっているので、負の感情を全て燃焼できないのかもしれない。
「成仏、したのかな」
「たぶん」
「でも、それってヒドくない?ミチカを魔界へ落としておいて、自分達だけ天国へ行くなんて」
「神様は太っ腹だから、導く光の下に入ってお願いすれば、たとえどんなヒドい事をしても天国へ行かせてくれるのかもしれない」
「…神様って、本当は頭が悪いんだよ。『光の下に入って一定時間待てば天国へ行かせてあげよう』とか、『悪い事したのは、天国で反省すればいいんだ』とか。普通、あり得ないでしょ?警察、いらないじゃない!」
「怒るのもわかるけど。今川さん、とにかくこの場を離れよう。魔界の住人も今は落ち着いている。早く逃げないと、今度こそ落ちてしまう」
「だけど、マジ、ムカツク!」
とたん、右手に持った父の携帯電話の着信メロディーが鳴った。メールを受信すると鳴るよう設定した物が。
「もしかして!」
私は急いで二つ折りの携帯電話を開き、来たメールをチェックした。
「り、リリコからだ!」
興奮のあまり呼吸は乱れ、携帯電話を持つ手が震えた。指先まで激しく震え、ボタンを押す時何度か滑ってしまったが、どうにか押した。
 目を通した後、森田、父、母の顔をグルリと見回し、ゴクリと唾を飲み込んだ。三人とも『読んで』と言うように、小さくうなずいた。
「じゃあ、読むね」
私は一字一句間違えないよう、食い入るように画面を見た。
「『初めまして、今川さん。私は今、ぜんぜん知らない人からミチカさんの事でメールをもらい、とても驚いています』」
「ぜんぜん知らない人?じゃあなんでリリコさんのメールがオレの携帯電話に届いたんだ?」
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