恐怖へいざなうメールはいかが~from.ミチカ
(まだ天国からの光は消えていない。成仏のチャンスはある!お願い、神様。リリコからのメールをミチカに伝えて。そうしたらきっと、引っ張り込んだ魔物達を振り払って成仏できるから!)
私はハアと大きく息を吐き出すと、シャツの上から、森田がくれたお守りを握りしめた。襲われたらすぐ逃げられるよう走る格好をすれば、再び魔界の入り口を見た。
「ミチカ、聞いて!リリコからミチカ当てにまたメールが来たの。今、読むね!『化け物になんか負けないで。絶対、成仏して天国へ行って!ミチカさんには、幸せになる権利があるんだから!』」
魔界への入り口はシーンと静まりかえっていて、ウネウネと動く住人は襲ってこない。野次馬達も静かに見ている。
「ねえ、聞いている?ミチカ!リリコはミチカの事、とっても応援しているよ。だから、捕まえている奴らなんかに負けないで、振り払って成仏して!」
しかし、やはり静まりかえったまま、何も起こる気配はない。
 いや、魔界の住人の手が、再び私達へ向かって伸びてきた。
「き、来た。とうとう来たぞ!」
「今川さん、早く逃げよう!つかまってしまう!」
「きゃーっ!」
私達が、ガラスが割れた窓から逃げようとすると、外で様子を見ていた野次馬達が蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。私達を追ってくる黒くて長い魔界の住人の手が恐ろしいのだろう。
 そんな時、母が床に転がっていたテーブルの脚を踏み、前のめりに転んだ。ぶつかった時に折れたものだろう。
「母さん!」
私は慌てて駆け寄り、母の手をつかんで引っ張り起こした。魔界の住人の手はすぐ側まで迫っていたが、見捨てていけなかった。
「今川さんっ!」
再び母と共に走って逃げようとすると、森田がキレたように叫んだ。驚いて後ろを振り返ると、住人の手が私と母をアッという間に、グルグル巻きにして捕らえた。
「クソッ!今川さんを放せ!」
「母さん、待っていろ。今、助けるぞ!」
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