恐怖へいざなうメールはいかが~from.ミチカ
イジメッ子達が汚くののしっている間も、天国から差し込む光の量は減り続け、二、三分後には完全に消えてしまった。天井は元の焦げ茶色に戻り、イジメッ子達は成仏への道を断たれてしまった。
『イヤダーッ!イヤダーッ!成仏シタイーッ!』
『アタシモ 成仏シタイーッ!』
四人は絶叫したまま魔界へ引きずり込まれ、住人もすべて引っ込むと、入り口は淡いアイボリー色のペンキを幾重にも塗り重ねたかのように、音もなく消えていった。一分後には、少し汚れはしたものの、いつも通りの床に戻った。
 私達は入り口があった場所へ駆け寄ると、まじまじと見つめ、かがんで手で触った。無くなったのが信じられなかった。
「無い…本当に、魔界の入り口が無い」
「魔界はイジメッ子達を引きずり込むために、閉じずに待っていたんだ」
「でも、ミチカは落ちてこなかったよね。ミチカがリーダーになって、三百人以上の魂を魔界へ引きずり込んだのに。何で成仏できたのかな?」
「今川さんを助けたからかもしれない」
「私を?三百人以上の魂を魔界へ落としても?」
「ああ」
「たった一回いい事をしただけで、神様はこれまでした悪い行いを許してくれるの?」
「神様は太っ腹だからね。ちょっとでもいい事をして、今までの行いを悔い改める姿勢を見せれば、許してくれるのさ。僕たち人間とは、器がちがうから」
「神様って、すごいなぁ…」
私はひとしきり感心すると、床に横たわる、亡くなった人たちを見た。
(彼らをこんなふうにしてしまったのは、自分。…それでも行いを悔い改める姿勢を見せれば、神様は許してくれるのだろうか?すごく甘い考えだけど、もし許してくれると言うのなら、プライドを捨ててでも償いたい)
私は彼らに向かって静かに手を合わせた。このまま何もせずには、帰れなかった。気づけば、森田や父、母も手を合わせていた。申し訳なく思っているのは、私だけじゃなかったのだ。
(神様が許してくれたらと思っていたけど、そうじゃない。許してくれなくても償わなければならないんだ。それが問題を起こした私の責任だから)
沈みそうになる気分を奮い立たせ、決心する。そして、今すぐ何をしなければいけないのか考えた。
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