恐怖へいざなうメールはいかが~from.ミチカ
『ありがとう。…それでね、メールを開かないようにしていたんだけど、夜の九時くらいだったかな。またミチカって人からメールが来て、何もしていないのに勝手に携帯電話が動き出したの』
「えっ!」
『不思議でしょ』
楽しそうな香の声とは裏腹に、私は凍り付いた。香と同じ状況になった後の私は、ミチカや魔界人に襲われ大変な目に遭った。できる事なら、二度と思い出したくない。記憶を封印してしまいたかった。
『最初はね、携帯電話が勝手に動き出したから壊れたかと思ったんだけど、よく見たらミチカから送られてきたメールだけ開いていたの。それで「これは、おかしい」と思って、すっごく怖くなったの。ダメなのはわかっていたんだけど、あまりの怖さに携帯電話を部屋の片隅に放り投げちゃった。でも動きが止まったらどうなったのか気になって、恐る恐る手に取ってみたの。そうしたら、信じられない内容のメールが開いていたの』
「ど、どんな?」
『「たくさん怖がらせてゴメンなさい。私は成仏します。だから、もう二度とこんな事はしません。安心して下さい」って』
「・・・!」
私は信じられなかった。ミチカがそんなことをするとは思えなかった。
『信じられないでしょ?「たくさん怖がらせてゴメンなさい」って。ミチカって人はたぶん幽霊かなんかで、この世に存在しない人でしょ?なのにメールを送ってくるなんて。どうやってメールを打ったのかな?どうやって送ったのかな?』
「うーん、わからない…」
『それでね、そのメールが来てから黒いモヤのかかった人を見なくなったの。これまでの生活が戻ってきたの。もう、不思議でしょうがない!』
「…そ、そうだね。不思議だね」
この言葉には、思わずうなずいた。ミチカが成仏したとたん、黒いモヤのかかった人は見えなくなり、いきなり元の生活へ戻った。この数日間に起こった事は、全て夢だったかのように。
『そう言えば、さっき涼子と茜からメールが来たんだけどね。二人も私と同じ目に遭って大変だったみたいなんだ。でも、やっぱり昨日の夜九時くらいに、ミチカから謝罪のメールが来たとたん、何も起きなくなったんだって』
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