恐怖へいざなうメールはいかが~from.ミチカ
『またね!』
通話を着ると、張りつめたものをはき出すようハアとため息をついた。すると全身が達成感に包まれ、笑顔になった。
 一番大切なメル友である香と、今回の一件でもっと仲良くなれた気がした。一時は大変だったが乗り越えた分、これからも末永く続いていくような気がした。
(雨降って地固まるって、こういう事を言うのかな)
ちょっと賢くなった気がした。
 ふいに、全身汗だくになっている事に気が付いた。ドアを閉め切って電話をしていたので、中の気温が急激に上がったらしい。
(でも、涼子と茜にも電話したいんだよな。ドアを背中で押さえて掛けるかな)
しかしやってみると、受話器と本体をつなぐ紐が短すぎてできない上、小銭が切れていた。
(十円しかないっ!携帯電話に掛けるとすごいお金がかかるのに。両替しないとダメだ!)
やむなく千円札を両替しようと近所のコンビニへ向かった。所持金が減るのは痛かったが、どうしても涼子と茜には早く謝りたかったので、仕方なくすることにした。二人も大切な友達だから。
「あっ!」
ところが、歩いて十歩目くらいで大事な事を思い出し、慌ててバス停へ向かった。
(今日は体育で百メートル走の記録を計る日だったんだ!一時間目だから絶対行かないとダメだ!)
全力で走ってバス停へ向かう。バス停まで五百メートル。思いの外距離があった。
(いける、今日の私なら行ける!だって昨日の夜たくさん寝たもん。今日は元気さ!)
さらに汗だくになりながらバス停へ向かって走った。するとなんとかバス停が見えてきた。ホームルームに間に合う最後のバスだけに、たくさんの生徒が乗ろうと並んでいた。
(うっわー絶対立ちっぱなしだ!全力で走った後に、たとえ二十分でも立ちっぱなしはキッツイなぁー。でも、留年はもっとイヤ。ええーい、がんばるぞーっ!)
私は列の最後に並ぶと、ギュウギュウ詰めのバスに何とか乗り込み、ギリギリつり革に捕まった。
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