恐怖へいざなうメールはいかが～from.ミチカ

（間に合った、よかったーっ！）
再びハアとため息を付き、額の汗をぬぐった。昨日とは違うスリリングさだ。
　ふと、バスの外を流れる景色を見つめた。車窓を流れるのは、これまでと同じ町並み。特に変わったところは無い。ミチカはちゃんと成仏したようだ。
　ふと、あることを思い出した。今朝朝食を食べた時、ノドに違和感を感じなかったのだ。
（ミチカが成仏したから？だとすると、今までノドに違和感を感じていたのは、ミチカに取り憑かれていたから？）
記憶を掘り起こしながら分析する。
（…そう言えば、ノドに違和感を感じるようになったのは、ミチカとメール交換するようになってからだ。その日の昼食までは、普通に食べていたもの）
この数日間、恐怖にさらされ体調まで悪かったので本当に辛かった。ようやく回復できて、とても嬉しかった。
　そして、ハッとした。
（ミチカ、首を吊って自殺したんだよな。もしかして、そのせいでノドに違和感を感じたのかな？）
自分の全体重をかけて首を絞め息ができなくなって死ぬのは、考えただけで苦しそうだ。証拠に、ミチカの首にはクッキリと縄の後が残っていて、事のすごさを物語っていた。
（取り憑くって事は、取り憑いた人の命を脅かすだけじゃなく、取り憑く側の死に際の状態まで、影響してしまうのかもしれない。改めて考えると、すっごい怖いなぁ）
もしミチカがおなかを刺されて死んでいたら、私はひどい腹痛に悩まされていたかもしれない。日常生活を送る事さえ困難だったかもしれない。
（もう取り憑かれないように気をつけなくちゃ！）
私は固く心に誓った。
　ほぼ予定通りの時刻に学校側のバス停に着くと、生徒の流れに乗って校舎の正面玄関へ入った。
（森田君、元気かなぁ）
来る途中、歩きながら森田の姿をあちらこちら探したが、見つからなかった。玄関にもいなかった。
（もう、教室に入っているかな？今日は遅めに来たから、その可能性は高いよね。森田君にはさんざんお世話になったから、改めてお礼をを言いたいんだよな。…よし、森田君のクラスまで行ってみるか）