恐怖へいざなうメールはいかが~from.ミチカ
しかし、彼のクラスへ行っても姿は無かった。ホームルームが始まるまで教室の前で待っていたが、やはり現れなかった。
(疲れて寝過ごして、遅刻したかな?それとも、具合悪くて休んだのかな?)
昨日の夜の一件を思うと、体調を崩す可能性は高かった。そうだとすると彼に申し訳なかった。心配になり、じっとしていられなかった。
 次の休み時間、思いに突き動かされるよう、彼の担任の先生を訪ねた。
「森田なら、虫歯になっている歯が痛いから歯医者へ寄ってから来ると連絡があったよ。午前中には来ると言っていたな」
「そうですか…どうもありがとうございました」
(よかった、歯医者か。体の調子が悪いから休むんじゃなかったんだ)
夜の一件とは関係が無さそうなのを知ると、やっとホッとして自分の教室へ戻った。そしてそのまま、お昼まで授業を受けた。
 ただ、ちょっと変な感じがした。携帯電話がないからだ。
(今までは、バイトをしている時と寝ている時以外、ずっとメール交換していたもんな。それが四日前くらいからほとんどしていない…こんな生活、耐えられると思わなかった)
五日前、『携帯電話ばかりイジっていたら、三年生になれないぞ』と説教され、さすがにヤバイと思ってメールをガマンしたが、十分で挫折した。あの時はメールが来たらすぐ返信しないと友達を失うと思っていたし、すぐ返信してこなければ役立たずだと思っていた。だからすぐ返信メールを打たずにいられなかった。
(今は携帯電話を持っていないって言うのもあるけれど、あそこまで病的にメールを打ちたいと思わないな)
そう思えるようになったのは、もちろんミチカのおかげ。彼女にはひどい目に遭わされたが、ワガママだった自分を見つめ直すチャンスと、他人を思いやる事の大切さを考えるチャンスを与えてくれた。他人を思いやれば、その人も優しくしてくれる。そうすれば、遠くにいる友人にウザッたいほど交流を持ちかけなくていい。
(これからは、すぐ側にいるクラスメイトも大切にしよう。それでも十分楽しい日々は送れるはずだから)
本当にそう思った。手始めに今日、いつもお昼を一緒に食べているクラスメイト達とできるだけ多くの時間を過ごし、話しを聞いてあげた。みんなはとても嬉しそうで、私の話もよく聞いてくれた。
  
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