恐怖へいざなうメールはいかが~from.ミチカ
そんな彼女達を見ていたら、私も嬉しくなった。楽しかった。
 この思いを、森田に伝えたくなった。そしてお礼を言うだけでなく、今度こそ謝りたかった。
「ちょっとトイレ行ってくる」
私は昼食を食べ終わると急いで席を立ち、小走りで教室を飛び出した。
(いるかな?森田君。もうお昼だし、歯の治療終わっているよね。登校してきているよね)
「あっ!」
するとすぐ、森田を見つけた。彼は自分のクラスの前にある窓の下の壁に寄りかかり、長い前髪の隙間からキョロキョロとあたりを見回していた。小走りで駆け寄っていく私を見つけると、ハッとして動きを止めた。
「よかった、登校してきていたんだね。朝、姿を探したらぜんぜん見えなかったから、心配していたんだ」
「ありがとう。…今川さんは、体、大丈夫?」
「すっごく、元気!昨日久々にベッドで寝たから、キッチリ疲れが取れたみたい」
「久々?じゃあ昨日までは、どこで寝ていたの?」
「バイト先のソファー。二日間だけどね」
「なんでバイト先のソファーで寝ることになったの?もしかして…お父さん、事業で失敗した?」
「まさか!…って言うか、森田君。けっこうしゃべるんだね。あんまりしゃべらないから、しゃべるの嫌いかと思った」
「イヤ、そう言うわけじゃ…」
「そうだ。歯医者行ったんだって?もしかして、昨日の事で歯が痛くなった?」
すると森田は、恥ずかしそうに下を見て視線をウロウロさせた。
「あの…場所替えない?」
「えっ、何で?」
「みんなの視線が、気になるんだ」
「そう?」
言われてあたりを見回すと、皆チラチラと私達を見てヒソヒソ話しをしていた。人の視線を気にする森田だから気になるのかと思ったが、私も十分気になった。恥ずかしかった。皆の視線が『二人って付き合っているの?』と言いたがっているように思えてならなかった。
「屋上行こう、屋上!」
私は先頭を切って歩き出した。
「ま、待って!」
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