恐怖へいざなうメールはいかが~from.ミチカ
森田は慌てて追いかけてきた。必死に追いかけてくる彼が、なんだか愛おしかった。
 四階建ての校舎の屋上は、そこそこにぎわっていた。できるだけ空いている場所に座りたくて探していると、落下防止用のフェンスによりかかりおしゃべりをしている生徒のグループ二、三組と、CDラジカセでアップテンポな曲をかけ、ブレイクダンスの練習に励んでいる五、六人のグループが私達をチラリと見た。しかしすぐ自分たちの世界へ戻り、おのおの楽しんでいた。校舎の中にいる生徒達のように嫌味な視線を向けたりしない。眩しい初夏の日差しは、心をおおらかにしてくれるらしい。おかげで私と森田は、気軽に座る場所を探せた。
 一、二分探したら、屋上の真ん中よりでグラウンドを見渡せる場所を見つけ、並んで腰を下ろした。グラウンドでは、サッカーや野球を楽しんでいる生徒が大勢いた。どの生徒も笑顔で、ワァワァ言っている。
 私は改めて森田を見た。森田はかすかに頬を赤くし、下を向いていた。並んで座るのが恥ずかしいらしい。そんな彼を見ていたら私も恥ずかしくなり、視線をそらしてしまった。異性と並んで座る経験など、そうはないから。
(でも、でも…ちゃんと謝らなきゃ。今度こそ謝らなきゃ!)
私は深呼吸すると、森田をきちんと見た。
「あの…あのね」
「ゴッ、ゴメン!」
「は?」
森田は突然頭を下げ、両手を合わせた。
「なっ、何がゴメンなさいなの?まっ、まさか…実はミチカが成仏していないとか?」
「えっ?もしかして、またミチカからメールが来た?」
「ううん、来ていないよ」
「じゃあ、ミチカはちゃんと成仏していると思う。間違いない」
「だったら、何?」
「それが…」
森田はスラックスの右ポケットに手を突っ込むと、中から昨日貸したハンカチを取り出した。ハンカチは昨日宣言したとおりアイロンをかけたらしく、シワはない。キレイだ。しかし森田の視線は、悪いことをして見つかった子供のように泳ぎっぱなし。
(なんだなんだ?どんな怒られるような事をしたんだ?)
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