恐怖へいざなうメールはいかが~from.ミチカ
私は小首をかしげつつ森田を見た。
「あ、ありがとう。ちゃんとアイロンをかけてくれたんだね」
「そんな事ないよ。かけたの僕だから、仕上がりは今イチで…」
「すごい!男子なのにアイロンつかえるなんて!」
「自分のことはできるだけ自分でしろ、って育てられたから、アイロンくらいは使えるんだ。でも…」
森田は申し訳なさそうにハンカチを広げた。すると、真ん中に二等辺三角形の焦げた跡がクッキリついていた。
「こっ、焦げている…」
「本当に、ごめん!昨日洗って、今日の朝学校へ行く前にアイロンをかけようと思ったんだけど…母さんに女の子柄のハンカチにアイロンかけているのを見られるのがイヤで、コソコソやっていたんだけど、急に呼び出されてさ。掃除機をかけて欲しいって用件だったんだけど、アイロンかけているのがバレたかと思ってすっごい慌てちゃって。スイッチも切らずにハンカチの上に乗せたまま、掃除機をかけに行っちゃったんだ。…そんなわけで、気が付いた頃にはこの有様になっていて…本当に、本当にゴメン!」
「そっ、そう。い、イイよ、ハンカチの一枚くらい。いっぱい持っているから気にしないで」
「そんな事ないよ!物は大事にしなきゃ。だから僕、お詫びに新しいハンカチ買ってきたんだ。気に入るかどうかわからないけど、コレ、もらって!」
森田はスラックスの左ポケットから、二つ折りになった紺色の小さな紙袋を取り出した。私はハッとして森田を見た。
「ねえ、もしかしてコレを買いに行くために遅刻したの?」
「えっ?ち、違うよ。歯医者にはちゃんと行ったよ。その後に近くのお店で買ったんだ。だってハンカチ一枚選ぶのに、そんなに時間かかるわけないだろ」
「それは、そうねえ…」
「だから、気にしないでもらって。ほら!」
森田は私の手にハンカチの入った袋を押しつけた。
「焦がした方のハンカチは、僕が責任を持って捨てておくから。いいよね?」
「良いけど、別に責任持たなくても…」
「よかった、これで心おきなく行ける」
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