恐怖へいざなうメールはいかが~from.ミチカ
「今川さんがいっぱい反省して、ミチカを成仏させたいって強く願ったから、助けてあげようと思ったんじゃないかな」
私は昨日の事を思い返した。言われてみれば、あの時の私はこれまでの自分の行いを心から反省し、『ミチカを成仏させなきゃ』と必死だった。
「それに、今思い出したんだけど、リリコにミチカを励ますメールを送ってくれるよう頼んで返ってきたメールに、『初めまして、今川さん』って書いてあった。つまり、お父さんの携帯電話に初めて届いたミチカ宛のメールは、リリコが送ったものじゃない、誰かが勝手に送ったって事になる」
「なるほど…そうね。神様じゃなきゃ、そんなことできないかもね」
「だろ?」
「…でも、森田君も助けてくれなかったら、私は死んでいたと思う。ううん、みんな死んでいたと思う」
「目の前で誰かが苦しんでいたら、たぶん今川さんだって同じ事をしたと思うよ」
「今の私ならそうするだろうけど、森田君と出会った頃の私は違った。自分の幸せばかり考えて、親の事さえ恨んだりバカにしたりしていた。そんなんだから、森田君にミチカが取り憑いている携帯電話を『捨てろ』って言われた時も、ムカツクばかりで聞く耳なんて持てなかった」
「今川さん…」
「あの時は、ゴメンね。ひどい事言って。それに、謝るの遅くなってゴメンね。本当はもっと早く言おうと思ったんだけど、素直になれなくてできなかった」
私の胸は、ちょっとドキドキしていた。やっと言えて嬉しい反面、謝るのは恥ずかしかった。
「…ありがとう」
「え?」
「そう思ってくれて、とても嬉しい。初めて今川さんに会った時、今川さんに取り憑いている悪霊がすごい奴だとわかって、本当は怖くて逃げ出したかった。でも、このまま見捨ててはいけないと思って、ありったけの勇気を振り絞って戦いを挑んだんだ。その気持ちをわかってくれたんだと思うと、本当に嬉しい」
森田は顔のパーツ全部を使って、とても嬉しそうに笑った。こんなに嬉しそうに笑う彼を見るのは、初めてだった。
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