恐怖へいざなうメールはいかが~from.ミチカ
「弱腰になるな、男でしょ!」
「はいっ!」
森田は背筋を伸ばし両手を太ももにつけ、『気をつけ!』の格好になった。私はゴクリ、と唾を飲み込むと、視線をウロウロさせた。
「あの…と、とと…」
「とと?トトロ?あの有名なアニメ映画に出てくる、森の主のトトロ?それにはなれないなぁ…僕、魔法は使えないし」
「違うっ!」
「ごっ、ゴメンっ!」
森田は顔を引きつらせ、オロオロした。私はそんな森田をニラんだ。
 しかし、すぐ小さく笑った。顔は、風邪を引いて高熱を出した時のように、熱く熱を持っている。
(がんばって、がんばって言わなきゃ…)
「と…」
「はい」
「友達に、なって…欲しいの」
「友達!僕が?僕でいいの?」
森田の顔が再びパアーッと明るくなった。
「うん。これからも、よろしくね」
「ああ、よろしく!」
「さ、私は言ったわ。今度は森田君の番よ」
「えっ、僕?僕は良いよ。今川さんと同じだから」
「本当に?言いたいことがあるんじゃないの?」
「無い無い!今川さんが言った事と同じ事を言いたかったんだ」
森田は頭を左右に何度も振った。壊れたオモチャみたいでひどくおかしい。私は大爆笑した。
 ほどなくして、授業開始を知らせるチャイムが鳴った。
「ヤバッ、早く戻らなきゃ!罰に英訳させられる!」
「次、英語?それはヤバイ。堺先生は遅刻してくるヤツ大嫌いだもんな」
私達は全速力で走って教室へ飛び込んだ。ラッキーな事に先生はまだ来ておらず、ほっと一息ついた。
(セーフ!)
教室へ入る時、森田にバイバイと小さく手を振った。森田は笑顔で振り替えしてくれた。そんなちょっとした事も嬉しかった。
(…そう言えば、男子の友達できたの初めてだ!)
たわいのない事だが、自分が進化したような気がし、笑顔がこぼれた。次の携帯電話を手に入れたら、ぜひ香の情報を一番に、森田の情報を二番に登録しようと思った。
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